ピケスト協会会長 鎌田敏郎

ごあいさつ・設立趣旨

わが国では今後、老朽管路の割合が急激に増加し、旧来の維持管理技術では対処が困難になる時代の到来が予測される。

この解決策として、とくに最近ではライフサイクルマネジメントやアセットマネジメントなど、新しい技法を導入した合理的な維持管理の重要性が叫ばれている。

そこでこれを具現化するためのツールとして「管路品質評価システム」を提唱し、システムの研究開発と普及を目指した活動を展開している。

この研究会では、まず評価すべき『品質』とは何かというところからスタートし『品質』について詳細な分類と整理を行い、それぞれの品質を的確に評価するための診断技術を明示して管理品質を総体として捉えるシステムを提唱している。

この「管路品質評価システム」の特徴は、管路品質をあくまでも定量的に数値で表現し、客観的な形で改築・修繕の要否判定を行い、改善の実施レベルを決定するところにある。

本会は、診断システムの研究開発を行う大学・メーカー、診断に携わるコンサルタント、調査業務に従事する調査・維持管理会社、管渠更生工事会社が広く集い、現在では40社を超える規模となっている。今後、評価システムのさらなる技術向上と普及に鋭意努力していきたい。

国立大学法人 大阪大学教授 ピケスト協会会長

鎌田敏郎

はじめに

今般、管路品質評価システム研究会を発展的に解消し、新たに管路品質評価システム協会として発足します。これは2003年から取り組んできた定量的な管路診断の基礎的な手法が確立し、開発を続けてきた診断装置が実用段階に入ったためで、今後は社会的なニーズに応えて、具体的に事業を支援する組織として活動してまいります。

いま下水道における社会的ニーズは、発生対応的な維持管理から予防保全を考えたアセットマネジメントへと変化しつつあり、農業用水などライフライン全体へも拡がりを見せています。定量的管路診断は、経済性の定量において管路施設のマネジメントには欠かせないもので、とくに改築や再構築などライフサイクルに関わる継続的な設計業務にも必要不可欠なものです。このような社会的なニーズの変化はビジネスモデルの変化をもたらし、従来の維持管理者と設計者の枠を越えて、高度な野外調査技術を有する会社とマネジメントコンサルティングを有する会社との創造的なコラボレーションを必要としています。
このような事情から協会発足にあたり、研究会の活動ベースとなっていた会員組織を一新し、従来の営業会員を廃止して、正会員(定量的管路診断に必要な機材と人員を有する高度な技術を持った調査会社と、管路施設のマネジメント技術を持ち定量的管路診断の普及に積極的な下水、農水コンサルタントで構成)、特別会員(公的機関)、賛助会員(調査機材の開発支援)で構成される、協会組織へ改編します。

協会では定量的な管路診断に賛同される会社の積極的な参加を呼びかけています。もちろん新しい診断技術を持って参加したい方も大歓迎です。以下の設立趣意をご覧のうえ、ぜひご入会ください。入会要領などの詳細は、事務局までお問い合わせください。

協会設立の目的

診断システムの啓蒙と普及

  1. 発生対応の維持管理から、予防保全の下水道マネジメント(アセットマネジメントやストックマネジメント)への変化に対応した、総合的な管路診断システムを啓蒙します。
  2. 管路の物理診断(劣化・出来形)、機能診断(流下能力・水密性・不明水ほか)、経済診断(下水道マネジメント)を統合した、総合的な管路診断システムを普及させます。
  3. 下水道だけではなく、農業用水を含めたライフラインパイプ全般の総合的な管路診断システムとして普及させます。
診断システムの啓蒙と普及

診断技術の向上と標準化

  1. 大学との産学共同研究など、先鋭的な取り組みにより、最新の数値診断技術をとりいれて技術向上を図ります。
  2. 下水道機構に向けた審査証明技術の構築など、公的機関と結んだ活動を支援して、公的評価の確立と国政レベルの標準化をめざします。
  3. 診断技術、調査ロボット、評価基準、積算などの、様ざまな作業部会を設けて、会員相互の協力体制により、診断システム全体の品質向上を支援します。
  4. 診断ロボットや検査装置を含めた、新しい定量的管路診断技術を積極的に評価し、協会レベルの導入を図ります。
  5. 改善工事とは独立した、診断事業の公正と透明性の確保を前提とした定量的管路診断の標準化を促進します。

会員への支援

  1. 業務の専門性や公正さに由来する、適正な業務利益の確保を側面支援します。
  2. 定期的な展示会への出展のほか、自治体向けにデモや講演会を開催して、販売促進を積極的に行います。
  3. 現場診断技術との交流を仲介し、物理・機能・経済診断を横断する総合診断システムの構築を積極的に支援します。
  4. 定量的管路診断に基づく、再構築、修繕、維持の判断と改築計画の策定や、更生管も含めた管路品質手法の標準化を促進し、これに基づく営業活動を支援します。
  5. 協会カタログ・標準仕様書のほか総合的な技術資料、積算資料、実績資料、審査証明などを提供し、販売促進を支援します。
  6. インターネットを利用した、最新技術、納品実績、業務統計、販促情報の提供や、調査データ、集約統計管理データを配付などのデータサービスを予定しています。

調査会員への支援

  1. 会員と同様に、業務の専門性や公正さに由来する、適正な業務利益の確保を側面支援します(前掲参照)。
  2. 継続的な研修セミナーの開催を通して、専門調査技術者の育成を支援します。
  3. RRLによる、公正な調査データサービスを提供します。